【特別対談】スタイル変更で試行錯誤する浦和と鹿島。強烈な個が多く、ベースの高い柏

COLUMN河治良幸×清水英斗 世界基準の真・日本代表論④

【特別対談】スタイル変更で試行錯誤する浦和と鹿島。強烈な個が多く、ベースの高い柏

By 清水 英斗 ・ 2020.5.14

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河治:川崎は鬼木達監督体制で4シーズン目を迎えました。開幕戦は昨シーズンとは違うスタイルで戦って、鳥栖に守り切られました(0-0の引き分け)。今後、どうクオリティを加えて勝ち点3を取れるチームになっていくか、見ものですね。


清水:浦和はどうですか? 大槻毅監督が2シーズン目に入り、昨シーズンとはスタイルを変えました。鹿島は監督もスタイルも変えました。こう見ると、全体的に転換期のクラブが多いですね。


河治:そうですね。鹿島も苦労していて、浦和は開幕戦こそ3-2で湘南に勝っていますが。


清水:大槻監督になって初めて、キャンプから入念にチームを指導できる理想のスタートを切った割に、開幕戦の完成度はあまり高くなかったと思います。細かい戦術指導が行われていると聞いたけど、その割には……。相変わらず、選手に委ねる部分が大きいのか、曖昧な対応が多いと感じました。


河治:浦和の中で変わった部分とえいば、ヨーロッパでは当たり前かもしれないけど、5レーンを設計して、サイドバックとサイドハーフが重ならないようにしたこと。最低限のことかもしれませんが、浦和からすると結構な革命ですよ。


清水:守備はずっと人ベースでやってきましたからね。


河治:そういった変化の中で、選手が結局どう判断するんだ、みたいなところは大きいんでしょうけど。


清水:浦和は実戦の中で積み重ねをするしかないとすれば、今季は試合間隔が縮まった中で、成長の余白が小さくなる危険もあります。1週間あれば、マッチ・トレーニング・マッチで反省しながらブラッシュアップできるけど、中2、3日で試合を続けると、なあなあの完成度で最後まで引っ張られる気がします。


河治:変な話、こういったときに興梠慎三とレオナルドの2トップが揃っているのは大きいと思う(笑)。


清水:たしかに!


河治:興梠は、昨季のシュート数はすごく少なかったんですよ。それでも、リーグ戦で12点取れちゃうという。レオナルドもそうですが、この2人は決定力が突出しているし、シンプルなプレーの中で点が取れる。それは湘南戦を見てもすごく感じました。


清水:流れのないところから、いきなり点を取れますからね。それもあって、浦和は完成度が高くなかったとしても、順位が沈むイメージも無いです。


河治:この2トップが揃うチームって、なかなか無いですよ。川崎は小林悠が右サイドに入るときは、中央のレアンドロ・ダミアンと実質2枚になりますけど、これだけ得点力があるFWが2枚揃うチームは見当たらない。


清水:本当ならタイプ的に喧嘩するかもしれないけど、興梠がうまく入れ替わりますからね。サイドに流れたり、少し下がったり。


河治:興梠が器用なので、レオナルドはペナルティエリアの幅を使えるんですよ。去年だと興梠がポストプレーで使われると、フィニッシャーがいなくなって武藤雄樹の飛び込みしかなく、その武藤も怪我をして誰もいなくなってしまった。そこにレオナルドが入ることで、常に重石ができる。このツートップの関係は、喧嘩する可能性もあるけど、試合によっては驚異的な2トップになる。戦術のベースが他より低いとはいっても、浦和には2トップという”戦術”がある。


清水:ありますね。ただ、そこに依存することでチーム戦術が頭打ちになるリスクもありますが、果たしてどうなるか。


河治:驚異的なFWという意味では柏も似ていますが、柏は浦和よりも戦術設計のベースが確立されています。チームはJ2のときから出来ているので。ネルシーニョ監督に「J2からJ1にカテゴリーが上がったとき、このメンバーがそのまま入って、どれだけ発揮できるのか」と聞いたら、「何を言ってるんだ」って言われて(笑)。「去年はJ2で戦ったけど、その前の彼らはどこで戦っていたんだ。J1でバリバリやっていたじゃないか」と。だからオルンガ、クリスティアーノ、江坂任、瀬川祐輔の4枚は、浦和の2トップとは形が違いますけど、連戦の中で決定的な個を持っているのは大きいと思いますね。


清水:今シーズンの開幕戦で、札幌はオルンガに相当やられましたね。


河治:まさにそれです。オルンガの圧力によって、クリスティアーノや江坂も空いてきますから。


清水:江坂はいつも良い場所を見ています。クリエイティブな選手なので、オルンガとの組み合わせは面白い。


河治:札幌戦は途中で瀬川が怪我をしたけど、後から入った神谷優太も良かった。神谷は負けず嫌いなので、それが良いほうに出ると、決定的な4枚+オプションになると感じます。他にマテウス・サヴィオもいるし、呉屋大翔もいるじゃないですか。多少メンバーを代えても、柏は常に8割以上で戦えるのかなと思う。その中でも規格外のオルンガを欠く状況になると、さすがに影響はあるでしょうけどね。


清水:さて次、鹿島はどうですか? だいぶポゼッション寄りに変わった感じはしますが。


河治:開幕戦の時点で鹿島は最下位になりましたが、実際のパフォーマンスも最下位だったと思うんです。それまで練習試合を全くやっておらず、中断期間になってから、同じ茨城の水戸や他のチームと練習試合をしました。DAZNで放送された札幌との練習試合もありましたけど、その中でどのくらいチームが引き上がったのか。


清水:はい。


河治:町田浩樹に聞いたときかな。例えば「ロングボールを蹴るな」みたいなことを、ザーゴ監督は言わないらしいんですね。だからベースはスタイルとして積み上げるけど、その中でも1つ1つの試合を勝つために、多少アドリブでやることに規制はない。そこは伝統的に勝負のこだわりを持っている鹿島らしい判断と、新監督の方向性が、どれくらいシーズンで噛み合ってくるのか。


清水:そうですね。


河治:変な話、もし降格があったらどうなるか。J1は名門や強豪と言われるチームが毎年のように降格するじゃないですか。そのリスクが鹿島や清水にも結構あるかな、というのが今シーズンでした。でも降格はなくなったので、鹿島に関してよりポジティブに、多少結果が出なくても途中で”ザーゴ解任論”みたいなことにならずに行けるんじゃないですか。


清水:今年の鹿島は新築とのことですから。家を建てる時間ができたわけですね。


河治:ただ、白崎凌兵などに聞いてみても、鹿島はそんな状況でも勝たなきゃいけないクラブなんだというプライドを持っている。


清水:札幌との練習試合を見ても、鹿島らしかったですよ。練習試合であの激しさ、ちょっと荒すぎると思うところもあったけど。以前、内田篤人が言ってましたけど、別にワールドカップだから特別に勝ちたいと思ってやるわけじゃないと。普段の練習試合やミニゲームでも、いつも同じぐらい勝ちたいと思ってやっていると。鹿島の人だなと、印象深かったのを覚えています。その雰囲気が札幌との練習試合にも出ていたので、監督がザーゴに変わっても、新築だとしても、やっぱり鹿島だなと思いました。


河治:そうですね。勝負にこだわりを持った中で構築を目指すと、戦術的な完成度という意味では、もしかしたら到達点が下がってしまうかもしれない。今、あえて特定のスタイルにこだわってやっているところを、状況によって引いて守ったりとか、ロングボールを蹴ったりすることが、頻繁に起きた場合に。


清水:今年の異例の環境で、鹿島がどんなふうに戦うのか。これは見てみたいですね。ポジション的に気になるのはボランチかな。後ろからつなぐ感じになると、ボランチの人選が難しい気がします。開幕戦で広島にハイプレスされてカウンターを食らったのもそうですが、今まではそこで相手を剥がすようなサッカーは指向しなかったと思うんです。レオ・シルバと三竿健斗のダブルボランチが、相手のハイプレスを外してビルドアップしていくイメージは、僕には湧かない。


河治:あのサッカーだと、三竿はセンターバックのほうが向いている気がします。鹿島に加入してからは、ほぼボランチで固定されていますが、センターバックの資質が高い選手なので。開幕戦の町田や関川郁万の出来で言えば、三竿がセンターバックに入ったほうがいいかもしれません。もちろん中断期間に、本職のセンターバック陣が良くなっている期待はありますが。


清水:配置転換の可能性はありそうですね。


河治:そうなると、ボランチに誰を入れるか。荒木遼太郎なのか、名古新太郎なのか。和泉竜司も名古屋でずっとワイドをやっていましたが、元々どのポジションでもできる選手。ボランチもあるかもしれません。それも含めて、鹿島はまだまだ試行錯誤。持ち前の勝負へのこだわりと、ザーゴスタイルの方向性。それが過密日程の中でどう出てくるのか。大岩剛前監督は、すり合わせ名人というか、良い塩梅を見つけるのが上手でした。今季は確固たるスタイルを持って戦う中で、ボランチの起用法など、試行錯誤がどう出るかですね。


清水:さて、他にも触れてないところは……。(第3回に続く)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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