東京五輪に向けて、サバイバル中のなでしこジャパン。パラグアイ戦の出来はいかに?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第78回

東京五輪に向けて、サバイバル中のなでしこジャパン。パラグアイ戦の出来はいかに?

By 河治良幸 ・ 2021.4.10

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サッカー女子日本代表”なでしこジャパン”は東京五輪に向けて、4月4日に集合し、強化合宿を行なっている。8日にはユアテックスタジアム仙台でパラグアイと親善試合を行い、7-0で勝利した。


相手のコンディションや調整不足も見られた中で、大差で勝利したことを喜びすぎるのは危険だが、本番を見越した狙いが確認できたところもあった。


今回は25人のメンバーで海外組6人が含まれているものの、キャプテン格の熊谷紗希が所属クラブのリヨンから、フランスの防疫事情により参加できていない。その分、岩渕真奈(アストン・ヴィラ)や熊谷の相棒を担ってきた南萌華(三菱重工浦和レッズレディース)らのリーダーシップも問われている。


WEリーグへの移行期間で所属クラブの公式戦が無い国内組は、3月に鹿児島で2週間におよぶ合宿を行なっており、そこから大量のメンバーが招集されている。そのため、田中美南(バイヤー・レバークーゼン)や岩渕ら海外組の選手たちが危機感を覚えるほど、連携面は高まっていた様子だ。


高まり始めた連携面


ドイツでプレーする田中美南は、日本の良さについて「細かいプレー、気が利くし、(相手を)外すのがうまい。サッカー自体が全然違う」と前置きしながらも、課題として「縦に刺していく、相手の頭を一個越す、スピード感をもっと出していく」ことの必要性を指摘している。


日本の強みを出しながらも、イングランドやアメリカなど欧米のチームと対戦したときに、パワー負けしてしまうところをどう埋めていくか。組織的な守備で相手をはめながらも、意図的なロングボールを蹴らせないことや、アバウトなボールを蹴られても的確にカバーして、デュエルに持ち込ませないことなどがポイントになる。


攻撃面では右サイドバックの清水梨紗が「距離感をすごく意識していて、短いパスと長いパスの使い分けを考えて練習している」と語るように、日本の強みである細かいコンビネーションを使いながら、それだけになってしまわないように幅をとり、相手の穴を見つけて突いていく意図は1年前よりも高まっているようだ。


8日に行われたパラグアイ戦を見ても、サイドハーフとサイドバックが同じ縦のラインに並ばず、どちらかかが外に張れば、どちらかが中に入るポジショニングを心がけたり、片方のサイドに2トップの一人が流れてチャンスを作ったら、必ず逆サイドからペナルティエリアに走り込んでいくといった約束事が、ほぼ抜かりなくできていた。


さらには、ゴール前に人数がかかりすぎることを防ぐため、中央に残ったFWとファーサイドから走りこむサイドハーフ、さらにボランチの一人がフィニッシュに関わったら、もう一人のボランチに加えて、逆サイドのサイドバックが中央に絞り、セカンドボールや相手のカウンターに備えるような事前のケアも、これまでよりも意図したものが見られた。


複数ポジションでプレーできることの重要性


パラグアイ戦が代表デビューになった北村奈々美(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)なども含めて、個人の特長は当然として、チームの中でいかに効果的な仕事ができるかが、重要な評価ポイントになる段階に来ている。


パラグアイ戦に右サイドハーフで先発した北村は「いつも左なので、右と左では感覚やボールの持ち方が違ってやりずらかった」と振り返るものの、1つのポジションをこなすだけでは、東京五輪の18人に残れないこともあり、右での起用も受け入れてアピールすることを意識していたようだ。


北村はチームのやり方に加え、個性を生かす部分も見られた。アピールには2つの種類があり、1つは誰が入っても同じサッカーをするための戦術理解、複数ポジションをこなせるといったチームプレーの部分。もう1つは同ポジションのライバルに無い、その選手ならではのスペシャリティだ。


主力の熊谷を欠く中で、南の相棒としてパラグアイ戦に起用された宝田沙織は、攻撃的なポジションもできる選手だが、東京五輪のメンバーに食い込むために、新天地のワシントン・スピリッツでセンターバックでの出場を志願したという。


パラグアイ戦では相手のカウンターの起点となるクサビを潰す対人の強さに加え、もう1つのスペシャリティを発揮していた。


右サイドバックの清水が「(宝田)沙織はキック力があって、遠くも見られる。ビルドアップでその選択肢を増やせたら」と語るように、先制点につながるコーナーキックの場面は、宝田のロングフィードをFW菅澤優衣香(三菱重工浦和レッズレディース)がおさめようとして、相手DFがなんとか逃れて得たものだった。


アピールを続けるFW陣


パラグアイ戦で5-0になってから、岩渕に代わって前線に入った田中美南は籾木結花(OLレイン)からのクロスボールをヘッドで押し込み、これまでの代表であまり見せなかった形のゴールで存在をアピールした。


また、後半40分に杉田妃和(INAC神戸レオネッサ)に代わって投入された木下桃香(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)も、短い時間ながら積極性を見せ、6点目では相手のクリアに体を当てて、こぼれ珠を籾木が押し込む流れに導いた。


パナマ戦に向けて、ACミランでプレーする長谷川唯がチームに合流する。パナマ戦もパラグアイ戦同様、チーム力やコンディションに差がある試合になりそうだが、それぞれの選手が役割を果たしながらスペシャリティを発揮し、最終メンバー入りに向けてアピールすることできるか。東京五輪のメンバー選考を左右しうる試合ということでも、注目したい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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