気合とコンディション頼みの森保ジャパン。その道は、W杯ベスト8に続いているのか?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第149回

気合とコンディション頼みの森保ジャパン。その道は、W杯ベスト8に続いているのか?

By 清水 英斗 ・ 2021.10.20

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10月はアウェーでサウジアラビアに0-1で敗れ、最終予選2敗目。崖っぷちから小石が落ち始めたが、その後はホームでオーストラリアに2-1で勝利。どうにか日本は踏みとどまった。


勝ったオーストラリア戦は普段とは異なるシステムで臨んだが、[4-3-3]だから、勝ったわけではない。


立ち位置は変える必要があった。オーストラリアのビルドアップは、状況に合わせて最終ラインを4枚から3枚に変えてボールを運んで来るため、普段の[4-4-2]の守備では、2トップのプレスがかみ合わない。


また、高い位置を取った両サイドバックが、日本の[4-4-2]の外側で幅を取るため、マークしづらく、相手のボールの出処と受け処、両方に問題が発生してしまう。


このような対[4-4-2]のビルドアップ戦術は、世界中で研究され尽くした。


ホームで気候も涼しくなり、日本としては高い位置からアグレッシブに奪いに行きたいが、オーストラリアのように整理されたチームに正面から[4-4-2]でぶつかると、プレスが空振りするリスクが大きい。そこでシステム変更に踏み切ったのだろう。


守田と田中の存在


ただ、必ずしも[4-3-3]に行き着く必要はない。前線の枚数を出方に応じて変え、相手が何枚でも、プレスを柔軟にはめることができればいい。


たとえば、[4-4-2]のまま片方のサイドを上げ、3バック気味になるように縦スライドする。あるいは2019年アジアカップ決勝で途中から見せたように、2トップが縦関係になって、中盤が三角形の[4-3-3]で人合わせのプレスに行ってもいい。


いくつかの選択肢がある中で、今回採用した中盤が逆三角形の[4-3-3]にたどり着いたのは、守田英正と田中碧の存在が大きかったのだろう。


このプレッシング戦術は、両ウイングの南野拓実と伊東純也を一段上げて相手センターバックにぶつけるため、その背後で相手ボランチとサイドバックの両方を見る2人のインサイドハーフに大きな負担がかかる。


その要所を務める守田と田中のコンディションが良く、なおかつ川崎でこの[4-3-3]プレスを究めていたのは重要だった。


4-3-3の効果は


とはいえ、日本代表としての練習時間は少なく、付け焼き刃の感は否めない。


実際、日本はこのシステムの急所である相手サイドバックへの対応に失敗し、芋づる式に崩され、後半25分に失点した。


明らかな急所だけに、対応は整理されて然るべきだが、そこまで手が回らなかったのだろう。本来は回ってほしいが。


形を変えたハイプレスがはまり、前半早々に得点。一方、後半は変えた形の急所を突かれて失点。立ち位置を変えた[4-3-3]の効果は、痛し痒しといったところか。つまり、[4-3-3]にしたから勝った、とは言えない。


決定的な勝因はシステムというより、強度だった。日本はオーストラリアをスピードや俊敏性で圧倒し、ボール周辺では常に優位に立った。


巧みにポゼッションを行うオーストラリアに走らされ、後半は疲労も見えたが、選手を代えつつ、どうにか最後まで走り切った。秋の涼しさでコンディションが上がり、2敗して後が無くなった選手から火事場の馬鹿力が出たように見える。


スピードと強度で上回った


巧遅は拙速に如かず。オーストラリアはよく整理されて巧みだったが、遅い。日本は多少粗くても、スピードや強度で上回って勝った。そして、その強度で上回れるコンディションの良い選手を生かす、オーストラリア対策を採用したこと。それが日本の勝因だった。


この試合はこれでいい。いいのだが、一抹の不安は残る。サウジアラビアとオーストラリアは、どちらもよく洗練されていた。


どうにも、森保ジャパンは強度とコンディション次第。完勝した3月の親善試合の韓国戦、敗れた東京五輪のスペイン戦や最終予選のオマーン戦など、強度や体力で相手を上回れば勝ち、上回れなかったら負け。そこを戦術や分析、ゲームコントロールでひっくり返すことがない。


今後の最終予選は、冬場から春にかけて行われるため、アウェーを含めてサッカーに適した環境になる。アグレッシブに90分を走り回って、強度頼りで乗り切ることは可能だ。残る最終予選はもう、これでいい。


しかし、この道はワールドカップのベスト8に続いているのだろうか。


本大会になれば、連戦で低下するコンディション、気候、環境、延長戦を含む決勝トーナメントなど様々な要素がある。相手も万全の準備をする。


今は気合とコンディション頼りでゲームコントロールに乏しかった、ロシアワールドカップを繰り返すイメージしか沸かず、天井はもう見えている。


勝ち点だけでなく、この印象もひっくり返る時が来ればいいが。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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